なぜ「とても」はビジネスの場で敬語表現として不十分だとみなされるのか。言語学者の金田一秀穂氏をはじめとする専門家が携わる現代日本語学の知見によれば、「とても」という副詞はもともと「とても〜できない」といった打ち消しの否定表現を伴う俗語的副詞として発達してきた経緯がある。
時代の変化とともに肯定表現にも広く使われるようになったが、文化庁や文化審議会国語分科会が示してきた「敬語の指針」の観点からも、公式な場や目上の人に対する敬語コミュニケーションにおいては、より格調高い副詞を用いることが望ましいとされる。日常会話の「とても」は親しみやすさの裏返しでもあるが、ビジネスの文脈ではその口語性が「品格の欠如」と解釈されるリスクを孕んでいるのだ。