作中で小池さんは、いつ訪ねても、どんな大事件が起きていても、ひたすら丼を抱えてラーメンを食べています。この「常にラーメンを食べている」という記号的演出には、昭和の過酷なアニメ制作現場と食文化の変遷が色濃く反映されています。
1958年に世界初の即席麺である「チキンラーメン」が発売され、日本の食卓に手軽なラーメン文化が急速に浸透しました。締め切りに追われ、24時間体制で原画を描き続けるトキワ荘やスタジオ・ゼロの若手クリエイターにとって、安価で素早くエネルギー補給ができる即席ラーメンは命綱ともいえる主食だったのです。
当時のアニメ制作現場では、作画用紙の山に囲まれながら、伸びかけのラーメンを急いで胃袋に流し込む光景が日常茶飯事でした。藤子・F・不二雄氏は、仲間である鈴木氏のストイックかつユーモラスな日常風景を切り取り、「邪魔をされても食べるのをやめない」という極端なギャグ表現に落とし込みました。小池さんが麺をすする姿は、昭和のクリエイターたちが青春を燃やした熱気のメタファーでもあります。