発行から年月を経てもなお、本書が突きつける問いは色あせるどころか増量した現実味を帯びている。加藤陽子氏の傑作『それでも日本は戦争を選んだ』を2026年の最新視点で再検証すると、日露戦争から太平洋戦争へ突入していく過渡期に存在した「幾つもの分岐点」が立ち現れる。当時の日本は決して狂気に憑りつかれた集団ではなかった。むしろ、当時の国際法や外交ルールを精密に研究し、自国の安全保障と国民感情を天秤にかけた結果として開戦を選んでいた。
隠された真相とは何か。それは、当時の意思決定者たちが「戦争を回避するための選択肢」を認識しながらも、国内政治の対立や世論の過熱、軍部の既得権益を守るために、自らその選択肢を消し去っていったという事実である。当時の国民もまた、メディアが煽る危機感とナショナリズムに同調し、開戦を歓呼で迎えた。情報過多と政治的分断が加速する世界で、私たちは同じ過ちを犯していないと言い切れるだろうか。本書が提示する歴史の分岐点は、まさに現代の私たちが直面している現実そのものだ。