親ではなく祖父母に似る現象を理解するうえで、基礎となるのが中学校の理科でも学ぶメンデルの法則です。日本遺伝学会では現在、かつて「優性遺伝」「劣性遺伝」と呼ばれていた概念を、形質が現れやすい「顕性(けんせい)」、表に現れにくい「潜性(せんせい)」と言い換えています。
人間は父親と母親からそれぞれ1組ずつ、合計2組の遺伝情報(対立遺伝子)を受け取ります。このとき、顕性の遺伝子と潜性の遺伝子を1つずつ持っている親の場合、外見には顕性の特徴だけが現れ、潜性の特徴は表面化しません。この状態の親は、特徴を隠し持った「保因者(キャリア)」となります。
具体例として、祖父が持っていた潜性の形質を親が受け継ぎ、配偶者(もう一方の親)も同じ潜性遺伝子を持っていた場合を考えます。親世代では2人とも顕性の特徴しか見せていなくても、子ども(孫)に両親からそれぞれ潜性遺伝子が1つずつ受け継がれると、親にはない祖父母の特徴が突如として孫の代に現れることになります。これが、隔世遺伝が起こる最も基本的な分子レベルのメカニズムです。