市立福山高校野球部が直面していた最大の壁、それは「練習環境の圧倒的ハンデ」だった。同校のグラウンドはサッカー部や陸上部と共有しており、野球部がダイヤモンドを全面使用できるのは週にわずか2日。平日の全体練習に割り当てられた時間は、実質1時間半にも満たなかった。
「時間を言い訳にしたら、私学強豪には逆立ちしても勝てない」。チームを率いる指揮官はそう言い切る。限られた時間で成果を出すため、チームが導入したのは徹底的な「秒単位のスケジュール管理」だった。ウォーミングアップは登校前の各自のセルフケアに委ね、グラウンドに立った瞬間から打撃・守備の高速ローテーションを開始。さらに、スマホアプリを活用したフォーム動画の共有により、選手同士が自宅で技術課題を相互指摘するシステムを構築した。量より質。無駄を徹底的に削ぎ落とした練習法が、選手たちの集中力を研ぎ澄ませていった。