TM NETWORKの名称の変遷を語る上で外せない歴史的トピックが、1990年秋に行われた「TMN」へのリニューアル(改名)です。
1987年にアニメ『シティーハンター』のエンディングテーマとなった『Get Wild』の大ヒット、1988年のアルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』での空前のコンセプトアルバム展開を経て、ユニットはすでに日本のトップアーティストとしての地位を確立していました。しかし、ヒットチャートの頂点に立った小室哲哉は、既存の「シンセポップ・ユニット」という固定観念に縛られることを恐れたのです。
1990年、通算7枚目となるアルバム『RHYTHM RED』の発表に合わせ、バンド名を「TMN」へと刷新。従来のデジタルシーケンス主体のサウンドから一転し、ハードな生ドラムやディストーションギターを前面に押し出した重厚なハードロックサウンドを展開しました。「TM NETWORK」という完成された看板をあえて一度壊し、3文字のアルファベットへ抽象化することで、音楽的自由度を極限まで広げようとした試みでした。
さらに、このTMN期はバンドの「終着点」を視野に入れたプロジェクトでもありました。1994年4月21日、デビュー10周年の記念日に突如として発表されたのは、「解散」ではなく「プロジェクト終了」という声明でした。「TMNという一つの役割を終えた」と表現されたこの幕引きは、東京ドーム2Days公演をもって完遂され、日本の音楽界に絶大な衝撃を与えました。
名前を短縮し、実験的な音楽をやり尽くし、最後は華麗にコンセプチュアルな終了を告げる――。この一連の流れは、バンド名を単なる固有識別子ではなく、作品をパッケージングするための「アートプロジェクトのタイトル」として扱っていた小室哲哉の先見の明を証明しています。