「スケジュール通りに基地へ行ったのに、1機もエンジンスタートしなかった」という苦い経験談は少なくありません。ブルーインパルスが訓練を行わない、あるいは離陸後に途中で切り上げる背景には、極めて厳格な安全管理体制が存在します。
ブルーインパルス飛行訓練中止理由の9割以上は、天候要因によるものです。視覚による相互位置の確認(有視界飛行方式:VFR)を絶対条件とする編隊飛行では、ブルーインパルス天候基準と雨天対応において明確なリミットが定められています。
具体的には、雲の底の高さ(シーリング)が約1,500メートル(5,000フィート)以上、かつ水平視程が8キロメートル以上確保されていなければ、フル課目のアクロバット飛行(第1区分)は実施できません。雲が低く垂れ込めている場合は、宙返りなどを伴わない水平旋回中心の「第3区分」や「第4区分」へ課目が変更されるか、視程不良・雨天時には訓練自体が完全にキャンセルとなります。
その他、周辺空域でのドクターヘリ緊急運航、猛禽類などの鳥の群れによるバードストライクの危険性、突発的な機体トラブル(マイナートラブル含む)が発生した場合も、人命と機体の安全を最優先して即座に中止判断が下されます。「青空が見えているのに中止になった」という場合でも、訓練を行う上空高層の風速や乱気流が限界値を超えているケースが多々あることを理解しておく必要があります。