本作を語る上で絶対に外せないのが、木村多江が見せた鬼気迫る「怪演」です。放送当時、彼女の狂気じみた演技はTwitter(現X)などのSNSで毎週トレンド入りを果たし、「ホラー映画より怖い」「夢に出てきそう」と視聴者を戦慄させました。
秀明の家庭をじわじわと侵食していく綾子の執念は凄まじく、真弓の留守中に佐藤家に上がり込んでカレーを作ったり、秀明の娘に接近したりと、予測不能の行動を連発します。上品で物静かな佇まいから一転、激しい嫉妬と執着を剥き出しにする表情のグラデーションは、木村多江という名優の真骨頂と言えます。
しかし、彼女の行動は単なる悪女の暴走にとどまりません。夫・太郎からの過度な束縛とモラハラに長年耐え続け、自己を喪失していたという哀しい背景が丁寧に描かれているからこそ、視聴者は恐怖を覚えつつも、どこか胸を締め付けられるような切なさを感じずにはいられないのです。