日が落ちると、千鳥ヶ淵は昼間の柔らかな表情から一変し、息を呑むほど妖艶な世界へと変貌する。LEDライトに照らし出されたソメイヨシノが漆黒の水面に鏡のように反射し、光と影のコントラストが濠全体を包み込む。
点灯直後の18時は仕事帰りの会社員やツアー客が一斉に押し寄せ、展望デッキ付近は足の踏み場もなくなる。狙い目は消灯直前の21時前後の30分間だ。人の波が引き始めたこの時間帯こそ、静けさを取り戻した水面に揺れる夜桜の真価を味わえる絶好のチャンスとなる。
撮影のベストポジションは、緑道の中ほどにある突き出た展望エリアだけではない。少し歩道橋側へ引いた位置から、街灯の光を前ボケにして濠のカーブを捉えると、奥行きのあるドラマチックな一枚をカメラに収めることができる。