本作の骨格をなすのは、伝統ある華道の家元「月島流」を取り巻く権力闘争と、下町の商店街に根付く無償の優しさという、対極にある二つの世界の衝突です。高嶺の花 相関図を読み解く上で欠かせない中心人物たちと、その複雑な力学関係を整理します。
主人公の月島もも(石原さとみ)は、華道界の名門「月島流」の長女であり、圧倒的な美貌と非凡な才能を誇る華道家です。しかし、結婚式当日に婚約者の裏切りによって破談を経験し、自信と自尊心を完全に喪失。味覚障害や生け花への情熱の枯渇に苦しむ中で出会ったのが、下町で小さな自転車店を営む風間直人(峯田和伸)でした。直人は「ぷーさん」の愛称で商店街の人々から慕われ、知性や財産はないものの、他者の痛みをすべて包み込む底知れない善性と包容力を持っています。
この二人の対照的な世界をかき乱すのが、ももの異母妹である月島なな(芳根京子)と、新興流派の若きホープ・宇都宮龍一(千葉雄大)です。当初は純粋に姉を慕っていたななですが、家元継承を巡る周囲の思惑に巻き込まれる中で自身の劣等感を刺激され、やがて冷徹な野心家である龍一に心身ともに翻弄されていきます。龍一は伝統の破壊を掲げて月島流の乗っ取りを画策し、ななを利用しながらももへも接近を試みる危険なトリックスターとして機能しました。
さらに、月島流の現家元でももの父・月島市松(小日向文世)の冷酷無比な芸術至上主義、その後妻でななの母であるルリ子(戸田菜穂)の執念、そして物語中盤で重要な鍵を握る運転手・高井雄一(升毅)の存在が絡み合います。市松は娘たちを芸術家として覚醒させるためなら、あえて精神的トラウマを植え付けることさえ厭わない冷徹さを見せ、家族関係は常に緊張と愛憎の極限に置かれていました。