ヴォーカルの専門家たちが口を揃えて称賛する実力者たちには、共通する解剖学的・音響学的な強みがある。それが「倍音(バイオン)」の豊かな響きと、自由自在な軟口蓋・喉頭のコントロールだ。
声量がある歌手の歌声には、基音の上に重なる高周波の倍音成分(フォルマント)が大量に含まれている。これにより、どれほど大音量のバンドサウンドやオーケストラがバックで鳴っていても、声が埋もれずに前へと抜けてくる。声帯を引っ張る輪状甲状筋の連動や、呼気圧の微調整がが無意識レベルで最適化されているため、長時間の過酷なステージでも声のブレや疲弊を見せない。彼らは自らの身体を緻密な管楽器としてチューニングし続けているのだ。