中国語が外来文化をどう言語の中へ組み込んできたのか。その歴史を振り返る上で、近代言語学の父と呼ばれる趙元任 (Yuen Ren Chao) の存在は欠かせない。彼は外国語の音と意味を巧みに融合させる翻訳論の礎を築いた。
日中対照言語学の視点から眺めると、日本語がカタカナを用いて「カレー」という音をストレートに借用したのに対し、中国語は「咖喱」という漢字の音声的価値を借りて受容した。文字そのものに意味が宿る表意文字の世界で、口偏を添えて音を示す工夫。一杯のカレーという単語の裏には、異文化の音を自らの体系に調和させてきた言語的知恵が詰まっている。