日本の犯罪史において、虚名をもって世間や被害者を翻弄した伝説の詐欺師一覧を紐解くと、映画のモデルにもなった「クヒオ大佐」の存在が真っ先に浮上します。彼の本名は鈴木和宏。北海道出身の日本人でありながら、鼻を高く見せる特殊なメイクを施し、白黒の軍服に身を包んで「カメハメハ大王の末裔でエリザベス女王の親族、米軍特殊部隊のエリートパイロット」を名乗り続けました。
クヒオ大佐の正体と手口の本質は、結婚をエサにした信用詐取でした。「結婚すれば軍から多額の結納金が出るが、手続きのために一時的な立て替え金が必要」と持ちかけ、1970年代から1990年代にかけて複数の女性から推計1億円以上を騙し取りました。被害者たちはいずれも社会経験のある女性でしたが、彼が誇示する虚飾の肩書と、女性側の「特別な存在として愛されたい」という心理的隙間に巧妙に入り込んだのです。逮捕と服役を幾度も繰り返した彼のその後は、出所後もなお同様の手口で逮捕されるなど、虚飾のアイデンティティから生涯抜け出せないまま社会の片隅へと消えていきました。
さらに、実在する有名詐欺師の経歴として見逃せないのが、平成から令和にかけて巨額資金を呑み込んだ経済事件の首謀者たちです。数万人から数千億円を詐取した「安愚楽牧場」や「ジャパンライフ」、さらに健康器具マルチ商法を展開した「エル・アンド・ジー(円天事件)」の波和二元会長など、自らを時代の寵児に見立てて大物タレントや政治家と記念写真を撮り、それを「信用の担保」として被害者を信用させる手口が共通しています。
こうした巨額詐欺事件の経緯と現在を追跡すると、多くの主犯格は懲役10年から15年以上の重刑を受け、獄中死あるいは高齢での刑務所収監が続いています。しかし、被害者のもとに奪われた資金が満額戻ったケースは皆無に等しく、海外のタックスヘイブンや暗号資産の迷宮へと隠匿された資産の行方は、今なお厚い闇に包まれたままです。