感情を持たない無機質な少女として登場した綾波レイ。その繊細な役どころを見事に体現したのが林原めぐみだ。90年代当時の声優業界においてトップランナーとして君臨していた彼女にとっても、「感情を抑えつつも、内側に秘められた微かな変化を表現する」というアプローチは極めて高度なハードルであった。
「無口」と「無感情」は異なる。林原めぐみは単なる機械的な演技に陥ることなく、シンジや他者との関わりを通じて微かに芽生える温かみを、僅かな息遣いや間(ま)の変化で描き出した。この演技表現は、その後のSFアニメにおけるキャラクター像に決定的な影響を与え、「無口系ヒロイン」という新たな属性の原点となった。アニメの枠を超えたこの表現力は、現在でも業界内で語り継がれる伝説的な仕事となっている。