京都の老舗バッグブランドとして世界中にファンを持つ職人集団の歴史において、最大の転換点となったのが世に言う一澤帆布お家騒動である。もともと明治時代に創業された同店は、実用性の高い丈夫な鞄造りで支持を集め、長らく京都を代表する名物店として愛されてきた。
三代目社長であった一澤恒夫氏の急逝に伴い、事態は風雲急を告げる。恒夫氏の没後、長年実務を取り仕切り職人たちを率いていた三男の一澤信三郎氏が経営を継承すると思われていた。しかし、突如として表に出た「もう一通の遺言書」が、平穏だった一族の絆を完全に引き裂くこととなったのである。