多くの読者に衝撃を与えた短編集『心臓』は、まさに彼女の真骨頂とも言える作品だ。表題作をはじめとする収録作は、過度な説明や大げさな展開を徹底的に削ぎ落とした短編漫画でありながら、読後には一本の重厚な映画を観終えたかのような深い余韻を残す。
この作品は文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品にも選出されており、クリエイターや批評家からの評価もきわめて高い。極限まで洗練された構図と、登場人物たちの沈黙が語る濃密なヒューマンドラマ。感情の機微をコマの行間に潜ませる手腕は、現代のマンガ表現における一つの到達点と言っていい。