湊かなえ作品の真髄は、張り巡らされた伏線が終盤で見事に収束していくカタルシスにあります。本作『未来』においても、章子が日常の中で見聞きした些細な会話、登場人物たちの何気ない行動の数々が、ラストに向けて鮮やかに結実していきます。
特に秀逸なのは、「未来」というタイトルの二重三重のダブルミーニングです。当初は時間的な「将来」を意味していた言葉が、物語の結末を迎えるにあたり、生命の連続性や次世代への希望を象徴する言葉へと変容します。
本作の結末は、いわゆる都合の良いハッピーエンドではありません。失われた命や負った傷が消えることはないものの、暗闇の底を這いずり回った章子が最後に下した決断には、力強い光が宿っています。イヤミスの枠組みを超え、「絶望を知る者だからこそ掴み取れる再生の物語」として着地する点に、本作が傑作と称される所以があります。