多くのユーザーが疑問に感じる「なぜ国内メーカーが自国民を締め出すのか」という点には、パブリッシャーが抱える旧来のビジネスモデルと複雑な契約構造という切実な裏事情が存在します。
最大の要因は、国内の「家庭用ゲーム機(コンシューマー機)市場」との力学です。日本は歴史的にPlayStationやNintendo Switchといった専用ゲーム機が極めて強い市場でした。メーカー側は国内の家電量販店やゲームショップといった実店舗の流通網、そしてプラットフォーマーとの強力な関係性を最優先してきました。もし安価なPC版を同時に国内展開してしまうと、定価でパッケージ版を仕入れている小売店や、専用ハードの普及を進めたい国内流通を圧迫してしまうという懸念が強固に存在していたのです。
スクウェア・エニックスをはじめとする大手パブリッシャーが過去に激しい「おま国」批判に晒された背景にも、海外販売は現地の海外法人が担当し、国内販売は国内の営業部門が管轄するという組織の縦割り構造がありました。海外法人側がSteamでの積極的なディスカウントや配信を推進しても、国内営業側は「国内パッケージ版の売上目標を守るため、日本からの購入にリージョンロックをかける」という判断を下さざるを得ない構造的ジレンマを抱えていたわけです。
さらに、日本特有のCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)による年齢区分審査コストや、声優の肖像権・JASRAC等の音楽著作権契約が「国内パッケージ利用」に限定されて結ばれていたケースも少なくありません。PCでグローバル配信するための権利再取得コストが、見込める売上に見合わないと判断された場合、手軽な解決策として「日本除外(日本ハブ)」が選ばれてきた経緯があります。