明治という激動の時代、海軍兵士たちが艦上で食べたカレーは、まさに活力の源であった。司馬遼太郎の金字塔的作品を映像化した名作ドラマ『坂の上の雲』(NHKオンデマンド等で配信中)の劇中でも、苛烈な時代を生き抜いた若者たちの食卓やミリタリーライフが生き生きと描かれ、当時の食文化に対する関心を一段と高めた。
艦上という限られた環境で、揺れる船内でもルーがこぼれにくいよう小麦粉で適度な粘り気を持たせた工夫は、実用性を重んじる海軍ならではの発想だった。インドからイギリスを経由して日本へ渡った西洋料理は、軍隊の栄養改善という至極真面目な目的を通じて、独自の進化を遂げたのである。