けの汁が現代の栄養学的な観点からも高い評価を受ける理由は、その計算され尽くした具材の組み合わせにあります。雪に閉ざされる冬の東北では、新鮮な緑黄色野菜の確保が困難でした。そこで活躍したのが、前年の春から秋にかけて収穫し乾燥・塩蔵しておいた保存食です。
基本となる具材は以下の通り、まさに大地の恵みの集大成です:
- 根菜類:大根、人参、ごぼう(加熱に強く食物繊維が豊富)
- 山菜類:ぜんまい、わらび、ふき(独特の香りと歯ごたえ、ミネラルを補給)
- 大豆加工品:凍み豆腐(高野豆腐)、油揚げ、すり大豆(ズンダ)
- 出汁・調味:煮干しや昆布出汁、津軽味噌(赤味噌系の芳醇な味噌)
特に決定的な役割を果たすのが「すり大豆(水で戻した大豆をすり鉢で粗くすり潰したもの、現地ではズンダとも呼ぶ)」と「凍み豆腐」です。大豆の植物性タンパク質とイソフラボン、凍み豆腐の凝縮されたカルシウムや鉄分がスープ全体に溶け出し、とろみと奥深いコクを生み出します。刻まれた山菜の不溶性食物繊維と大豆の水溶性食物繊維が腸内環境を整えるため、現代においては「食べるサプリメント」「腸活スープ」としての再評価が進んでいます。