矢板を語る上で欠かせないのが、名峰・高原山(たかはらやま)の伏流水と昼夜の寒暖差が育む農産物だ。特に「樹上完熟」にこだわるリンゴ栽培は、市場出荷を介さず果樹園直売でほぼ全量が売り切れるほどの熱狂的なファンを持つ。
2026年の今、この伝統的な果樹栽培に次世代の波が押し寄せている。後継者不足に悩んでいた果樹園に都市部からU・Iターンした若手が参入し、クラフトシードル(リンゴ発泡酒)の小規模醸造や、果樹園の木陰を活用したオープンエアカフェを展開。採れたての果実をその場で味わう贅沢を求め、週末には県内外から感度の高い家族連れや食通が列をなす。大量生産のサプライチェーンから距離を置き、顔の見える関係性で完結するローカル経済の強さがここにある。