読み聞かせや学校教育の現場で頻繁に議論されるのが、「地蔵の体数」と「手ぬぐいのエピソード」です。地域ごとの民話採集データや絵本のバージョンによって若干のバリエーションが存在します。
日本全国の伝承を検証すると、もっとも広く普及しているのは「地蔵は6体」という設定です。これは仏教の「六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)」のすべての世界において衆生を救済する六地蔵(ろくじぞう)の概念に基づいています。村の境界や辻に6体の地蔵を祀る風習は全国にあり、旅人や村人を厄災から守る象徴でした。
一方で、東北地方などの一部の口承文芸では、地蔵が「7体」や「8体(笠7つ+手ぬぐい1つ)」、あるいは笠が3つしかなく残りに手ぬぐいや前掛けを被せるバリエーションも報告されています。しかし、物語のドラマ性を高める黄金比として定着したのが「笠5つ+手ぬぐい1つ=計6体」の構図です。
なぜ最後に自分の「手ぬぐい」を被せたのかという理由には、非常に深い人間性が込められています。笠が1つ足りないからといって、最後の1体を素通りすることは、おじいさんの慈悲深さが許しませんでした。「みすぼらしい手ぬぐいで申し訳ない」と詫びながら自らの身につけている唯一の防寒具を差し出す行為は、商品としての菅笠を譲る以上の「自己の身体的温もりを分け与える行為」に他なりません。このディテールこそが、お地蔵様の心を最も強く動かした決定打として語り継がれているのです。