本作の伝説的な導入部として語り草になっているのが、単行本第1巻に登場する「アジフライの配分」をめぐる攻防です。現場の若手作業員たちに弁当のアジフライをさりげなく譲ることで、「気前のいい頼れる先輩」を演じようと画策する黒沢。しかし、計算尽くの配慮はことごとく空回りし、現場の空気は冷え切っていきます。
読者が思わず頭を抱えたくなるような滑稽な日常劇から、物語は次第に予想もしない方向へと熱を帯びていきます。中学生とのタイマン勝負、河川敷でのホームレスたちとの交流、そして手作りのバリケード人形「太郎」を作り上げて過酷な夜警に挑むエピソードなど、登場人物たちの個性が複雑に絡み合っていきます。
坂口や有田といった現場の仲間たち、凄腕の格闘センスを持つ仲根、そして御木や徳田といった個性豊かなキャラクターたちとの関わりを通じて、黒沢の孤立した世界は少しずつ、しかし確実に広がっていきました。