堤義明氏の現在を語る上で避けて通れないのが、父・堤康次郎(元衆議院議長・西武グループ創業者)から受け継いだ帝国の拡大と、あまりにも劇的な崩壊劇です。
1964年に康次郎氏が急逝した際、数ある兄弟の中から後継者として指名された義明氏は、中核会社である「国土計画(後のコクド)」を頂点とするピラミッド型の支配構造を確立。西武鉄道、プリンスホテル、西武ハイヤーなどを統括し、全国各地のスキー場やリゾート開発を猛烈なスピードで推し進めました。1980年代後半のバブル期には、米フォーブス誌の長者番付で個人資産が約3兆円(当時の換算)と試算され、名実ともに世界一の富豪として世界中にその名を轟かせました。
また、1978年にはプロ野球「西武ライオンズ」を創設して黄金時代を築き上げ、1998年の長野冬季オリンピック招致ではJOC(日本オリンピック委員会)初代会長として決定的な役割を果たすなど、日本のスポーツ・文化振興にも巨額の私財と情熱を注ぎ込みました。
しかし、その絶対的な君臨は2004年に突如として暗転します。西武鉄道の株式を巡り、コクドが実質的に過半数を保有していたにもかかわらず、上場維持基準をクリアするために個人名義などに偽装して過少記載していた「名義偽装問題(有価証券報告書の虚偽記載)」が発覚。さらに、公表前に自社株を親密先に売却していたインサイダー取引疑惑が浮上し、2005年3月、東京地検特捜部によって証券取引法違反容疑で逮捕されました。
2005年10月に東京地裁で下された判決は、懲役2年6月・執行猶予4年、罰金500万円。法廷で「すべて私の責任でございます」と深々と頭を下げた姿は、半世紀に及んだ「堤ワンマン支配」の終焉を日本社会に強く印象づけました。