美空ひばりという巨星のディスコグラフィにおいて、『愛燦燦』はどのような位置を占めているのでしょうか。昭和歌謡史に燦然と輝く他の代表曲と比較分析することで、本作の特異性と先進性が浮き彫りになります。
1960年代の『柔』や『悲しい酒』が、高度成長期の日本社会の熱気や個人的な情念を歌い上げたのに対し、1980年代後半の『愛燦燦』は明らかに異なる地平に立っています。1987年に重病(特発性大腿骨頭壊死症および慢性肝炎)で長期入院を余儀なくされ、翌1988年に伝説の「東京ドーム不死鳥コンサート」で見事な復活を果たした際、ひばりが中盤のクライマックスで歌ったのがこの『愛燦燦』でした。
肉体の激痛に耐えながら、命を振り絞って「人間て かわいいね」と微笑みかける姿は、もはや一人の歌手を超え、人々に救いを与える聖母のような存在感を放っていました。『川の流れのように』が人生の雄大な終着点を示すとすれば、『愛燦燦』は苦難の途上にある人々の背中をそっと撫でる、現在進行形の癒やしの歌といえます。