提供されるメニューに、よくある「カシスオレンジ」や「ジントニック」の文字はない。代わりに並ぶのは、厳選された国産ボタニカルや、自家製の発酵シロップを用いた実験的なグラスの数々だ。
たとえば今季のスペシャリテ。京都の老舗茶園が手掛ける有機抹茶に、減圧蒸留で香りを抽出した和ハーブ、そして古酒を掛け合わせた一杯は、一口含んだ瞬間に複雑な香りが鼻腔を抜ける。一口ごとに変化する風味のレイヤー。ハイテク機器をバックバーに備えつつも、一杯を仕上げる手つきには伝統的な職人の所作が色濃く残る。この相反する要素の同居こそが、訪れる者を魅了して離さない理由だろう。