なぜ、これほどまでに多くの人が声のトラブルを訴えるようになったのか。ボイストレーナーや耳鼻咽喉科の医師らは、オンラインコミュニケーションツールの「過保護さ」を指摘する。ZoomやTeamsなどのツールは、ノイズキャンセリング機能や自動ゲイン調整が極めて優秀だ。ささやき声に近いボリュームであっても、システムが勝手に音量を引き上げ、クリアな音声として相手に届けてくれる。
この便利さに慣れきった結果、私たちは「息を吐き出し、声帯を適切に振動させ、空間に音を響かせる」という、本来の発生プロセスを忘れてしまった。声帯を取り囲む筋肉や、呼吸を支えるインナーマッスルが急速に退化しているのだ。結果として、リアルな空間でいざ話そうとしたときに、空気の振動が足りず、目の前の人にすら届かない「か細い声」になってしまう。