立木氏の長いキャリアの中で、名実ともに社会現象を巻き起こした代表作の筆頭といえば『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの碇ゲンドウです。冷徹で威圧的、主人公・碇シンジに冷酷な決断を迫る司令官でありながら、心の奥底に妻・ユイへの執念を秘めた複雑な人物像を、硬質で抑制の効いた低音ボイスで見事に表現しました。「乗るなら早くしろ、でなければ帰れ」に代表される名台詞の数々は、立木氏の重厚な芝居があってこそ不朽のインパクトを残しました。
一方で、そのシリアスなイメージを鮮やかに裏切ってファンの心を掴んだのが、『銀魂』に登場する「マダオ」こと長谷川泰三です。元・幕府の高官でありながら仕事を失い、不運の連続でホームレス同然の暮らしを送るコミカルなキャラクターを、哀愁と情けなさたっぷりに熱演しました。重厚な美声をあえてダメ男の嘆きに投入するギャップは絶大な人気を博し、実写映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』の短編ドラマ版では立木氏本人が実写キャストとしてマダオ役を演じるという伝説的なサプライズまで実現させています。