くも膜下出血という大病以前から、彼はもう一つの大きな試練と共存していた。生まれつき骨が非常に脆く、わずかな衝撃で骨折を起こす国家指定の難病「先天性骨形成不全症」である。幼少期から数十回におよぶ骨折を経験し、車椅子生活や長い入院生活を余儀なくされてきた。
「なぜ自分だけがこんな体に生まれたのか」。少年時代の彼は、絶望と孤独の中にいたという。しかし、その小さく儚い身体の中に秘められていたのが、天から授かった「天使の歌声」だった。骨の脆さゆえに身体的制約を受けながらも、彼は声楽の世界へ身を投じ、カウンターテナーという稀有な表現者として開花していった。