野田秀樹の稽古場は、妥協をいっさい許さない戦場として知られる。しかし、大竹しのぶはその戦場を誰よりも楽しむ天性の舞台人だった。
「野田さんのセリフは、覚えて喋るんじゃない。身体を通り抜ける風のようなもの」と、大竹はかつて語ったことがある。一方の野田もまた、彼女の持つ底知れぬ女優魂に絶対の信頼を寄せていた。稽古場で野田が投げかける無茶振りのような演出要求に対し、大竹は想像をはるかに超える返球をして見せる。演出家と女優という関係を超えて、互いの限界を押し広げあうスリリングな応酬。それこそが、NODA・MAPの舞台が放つ特異な熱量の源泉であった。