『バイオハザード7』のストーリー考察を進めるうえで、最も胸を締め付ける核心部がベイカー家の真相です。プレイヤーに襲いかかるジャック、マーガレット、ルーカスらは残虐非道な怪物として描かれますが、彼らはもともと心優しいごく普通の家族でした。
事件の発端は、2014年に発生した嵐によるタンカー座礁事故です。一家の主であるジャック・ベイカーは、難破船の近くで倒れていた少女エヴリン(被験体E-001)とミアを救助しました。しかし、この人道的な善意が一家を地獄へと突き落とすことになります。
生物兵器開発組織「H.C.F.」の関与のもとで作られたエヴリンは、体内で生成する「特異菌」を介して他者の精神と肉体を支配する能力を持っていました。隔離施設で愛情を知らずに育ったエヴリンの目的は、強大な力による世界の破滅ではなく、歪んだ執念による「完全な家族を手に入れること」だったのです。特異菌に感染したベイカー家の人々は脳を直接侵され、エヴリンを「娘」として愛し、彼女の命令に従わざるを得ない狂気の操り人形へと変貌してしまいました。
作中の館で見つかる手記や写真には、かつてジャックが家族を愛する良き父親であり、マーガレットが温かい母であった証拠が数多く残されています。逃げ場のない狂気に蝕まれていく彼らの葛藤は、本作を単なるホラーゲームにとどめない重厚な人間ドラマへと昇華させています。