1997年2月に講談社から刊行された写真集『INTRINSIC』は、発売と同時に出版界とアート界に巨大なセンセーションを巻き起こしました。カメラマンを務めたのは、日本のポートレート・エロス・アート写真を牽引し続けた巨匠・篠山紀信氏です。当時32歳、バレリーナとして脂が乗り切っていた草刈民代さんの肉体を、一切の妥協なくモノクロームとカラーの陰影の中に焼き付けました。
ページをめくってまず目を奪われるのは、無駄な脂肪が極限まで削ぎ落とされたバレエダンサー特有の筋肉美です。背筋から脊柱起立筋、引き締まった臀部、しなやかに伸びる四肢のラインは、過酷な稽古を重ねてきた表現者だけが宿す孤高の造形美を放っています。篠山氏の巧みなライティングと構図は、肌の質感や躍動する筋肉の陰影を彫刻のように立体的に浮き彫りにし、エロティシズムを超越した「人体の神秘」を提示しました。
世間では当時、映画のヒット直後というタイミングもあって「大胆なフルヌード挑戦」というスキャンダラスな側面が先行して報じられる場面もありました。しかし、実際に本を手にした批評家や読者、バレエファンからは「これほど美しく、気高い肉体表現は見たことがない」と圧倒的な絶賛の声が寄せられ、ヌード写真集の概念を塗り替える一冊となったのです。