「初めてのルーブルも」「特別なことじゃない」といった印象的なフレーズで始まる『One Last Kiss』。その歌詞を丁寧に読み解くと、初恋の記憶や二度と戻らない時間に対する切ない肯定感が浮き彫りになる。単なる別れの歌ではなく、他者との出会いによって変化した「自己」の受け入れが描かれているのだ。
エヴァンゲリオンという作品が長年問い続けてきた「他者との距離感」や「心の壁」。宇多田ヒカルはそれを日常的な手触りのある言葉へと昇華させた。「忘れられない人」がいるすべての人間へ向けられた温かい眼差しが、聴く者の個人的な記憶とシンクロし、時代を超えた普遍性を獲得している。