初代若乃花(本名:花田勝治)は、1928年(昭和3年)3月16日、青森県中津軽郡大秋村(現在の弘前市)のリンゴ農家に生まれました。幼少期は極度の貧困に見舞われ、室蘭での港湾労働や鉱山作業など、過酷な肉体労働に従事して家計を支える日々を送ります。この過酷な労働環境が、後の強靭な足腰と不屈の精神力を育む土台となりました。
相撲界へ入門した当時の体格は、大相撲の世界では極めて小柄な部類でした。力士としては致命的ともいえる体格差を克服するため、若乃花が課したのが「常軌を逸した猛稽古」です。稽古場で見せる鬼気迫る表情、一切の妥協を許さない姿勢、そして土俵際で絶対に諦めない執念から、いつしか「土俵の鬼」と呼ばれるようになりました。
その真骨頂が、相手を豪快に宙に浮かせて叩きつける幻の離れ技「呼び戻し(仏壇返し)」です。小柄な体で大型力士の懐に飛び込み、絶妙なタイミングで相手のバランスを崩してねじ伏せる技術は、まさに鍛錬の極致が生み出した奇跡の技でした。