現在、日本の主要メディアや国際的な学術機関において、「ホッテントット」は人種差別的な呼称として使用が厳しく控えられています。その理由は単に「語源がからかいだったから」という軽微な話にとどまりません。南アフリカ先住民族が受けた過酷な植民地支配の歴史そのものと結びついているためです。
オランダ人(後のボーア人・アフリカーナー)が入植すると、牧畜を営んでいたコイコイ族は土地と家畜を奪われ、伝染病の流行も重なって人口が激減しました。生き残った人々も農園での過酷な労働力として隷属させられ、独自の文化や言語コミュニティを徹底的に解体されていったのです。
19世紀から20世紀にかけて優生思想や人種隔離政策(アパルトヘイト)が形成されていく過程で、「ホッテントット」という呼称は「文明から取り残された劣等な野蛮人」というステレオタイプを強化するラベルとして機能しました。こうした歴史的背景から、現代においてこの言葉を公の場で使うことは、過去の非人道的な人種差別や植民地主義の暴力を無批判に肯定することにつながると見なされ、使用が完全に廃止されました。