なぜ彼の創り出す世界はこれほどまでに観客の心を捉えて離さないのか。佐藤二朗監督作品の核心にあるのは、滑稽さと切なさが紙一重で共存する圧倒的な人間描写だ。
スクリーンに登場する人物たちは皆、どこか欠落し、愚かで、みじめな姿をさらす。しかし、佐藤監督の眼差しは決して彼らを見捨てない。残酷なまでの現実に打ちのめされながらも、必死に生を全うしようとする泥臭い姿に、温かな光を照射する。
ユーモアで観客の緊張を緩めた直後、一気に心臓を抉るような重厚なドラマへと引きずり込む緩急の差。この計算し尽くされた心理的ダイナミズムこそが、日本映画界において彼が異彩を放つ最大の理由と言えるだろう。