かつて永田町の中心で「変人」とまで称された政治家は、家の中ではどのような父親だったのか。近年になり、長男・孝太郎の口から語られるエピソードは、世間が抱く冷徹な政治家像を鮮やかに覆す。徹底した放任主義でありながら、人生の節目には必ず短く重みのある言葉を授ける。それが小泉家のスタイルだった。
2026年現在も、二人の交歓は変わらない。週末にふらりと顔を合わせ、冷えたビールを酌み交わしながら語り合うのは、政治の裏話ではなく、ごく日常の出来事や芸術についての雑談だ。「親父は一度も僕の仕事に口を出さなかった。ただ『世間にお世話になっていることを忘れるな』とだけ言われた」。そう語る孝太郎の眼差しには、一人の男としての父への深い尊敬が滲む。決して甘やかさず、かといって放ちっぱなしにもしない絶妙な絆が、今の孝太郎の揺るぎない人間性の骨組みを作った。