川崎市川崎区小田に鎮座する日枝大神社は、近隣住民から親しみを込めて「小田の日枝さん」と呼ばれ親しまれてきた古社です。その起源は近江国(現在の滋賀県)の日吉大社を総本宮とする山王信仰に遡り、古くから小田村の総鎮守としてこの地の開拓と人々の生活を見守り続けてきました。
お祀りされている主祭神は大山咋神(おおやまくいのかみ)です。大山咋神は古事記において「山の上に座して鳴鏑(なりかぶら)を持ちたる神」と記されるごとく、山林の守護、国土開発、治水、農耕の神として絶大な神徳を発揮します。近代に入り京浜工業地帯の発展とともに住宅街と工場群が共存する川崎の地において、地域の産業発展と家内安全を守る守護神としての役割を担い続けてきました。
幾度もの時代の変遷や戦災を乗り越え、氏子崇敬者の手によって美しく護持されてきた社殿は、訪れる者に静かな力強さを感じさせます。単なる歴史的建造物にとどまらず、地域コミュニティの精神的支柱として現在も息づいている点こそが、日枝大神社が持つ最大の神威といえます。