二酸化チタンを巡る議論で最も大きな転換点となったのが、欧州食品安全機関(EFSA)が2026年に発表した安全性評価の見直しです。EFSAは「食品添加物としての二酸化チタン(E171)は、もはや安全とはみなせない」と結論付け、これを受けて欧州委員会は2026年に食品への使用を原則禁止としました。
この決定の核心にあるのは「遺伝毒性(DNAを傷つける可能性)の懸念を完全に排除できなかった」という点です。二酸化チタンの粒子には目に見えない超微細なナノ粒子(100ナノメートル以下)が一定割合含まれており、経口摂取によって消化管から微量に吸収された場合、長期間体内に蓄積して細胞やDNAにダメージを与えるリスクが動物実験などで示唆されました。ここで極めて重要なのは、「直ちに毒性や発がん性が確認された」わけではなく、リスクが100%否定できない以上は消費者の口に入れないという欧州特有の「予防原則」が働いたという事実です。
一方で、国際がん研究機関(IARC)が二酸化チタンを「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)」に分類していることも不安を煽る要因となっています。しかし、この評価は製造工場などで微小な粉塵を高濃度で大量に吸入し続けた場合(呼吸器系への影響)を対象としたものであり、一般的な食品や化粧品からの摂取経路とは暴露条件が根本から異なります。