平成から令和への御即位の礼において、厳重に黒漆の箱に収められた状態で奉呈された「剣璽」。その中身がカメラのレンズに晒されることは一切なかった。皇室ならびに宮内庁は、神器の具体的な形状や材質、保存状態に関する一切の質問に対して徹底した沈黙を貫いている。
神道・宗教界における解釈では、神体とは「見るための道具」ではなく「畏怖し、その気配を感じ取るための依り代」である。現物をCTスキャンや炭素年代測定などの科学的解剖にかける行為は、神聖なる信仰の根底を破壊する禁忌にほかならない。科学的合理主義による実在証明の要求と、聖性を維持するための不可侵原則。この相容れない二つの価値観がせめぎ合うギリギリの境界線に、神器の神秘が保たれているのだ。