「まさか耳の形やシワが、命に関わる心臓病と関係しているなんて」——多くの人がそう疑うのも無理はない。しかし、臨床医学の世界において、耳たぶに斜め45度の角度で刻まれる線は「フランクサイン(Frank's sign)」と呼ばれ、循環器系の異常を示す客観的なバイオマーカーとして認知されている。
なぜ耳の皮膚が心臓の異常を告げるのか。メカニズムの根底にあるのは、動脈硬化による血流障害だ。耳たぶは軟骨がなく、主に脂肪組織と豊富な毛細血管で構成されている。全身の血管内で弾力性が失われ、内腔が狭まると、末端組織である耳たぶへの血液供給が真っ先に滞る。その結果、皮下脂肪の縮小とコラーゲン繊維の断裂が起こり、明確な溝として表面化するのだ。
過去に放映され大きな反響を呼んだ『NHKスペシャル 人体』でも、微小血管の途絶が全身の臓器障害に直結する様子が克明に描かれた。血管の劣化は決して目に見える場所だけで起きているのではない。耳たぶに深いシワが1本でも出現している場合、心臓の冠動脈や脳へ血液を送る頸動脈でも同様に硬化が進行している可能性が高い。冠血管の閉塞が引き起こす心筋梗塞や、脳の血管が詰まる脳梗塞という致命的な急性期疾患のリスクが、シワのない人と比べて著しく高まることが最新研究で徹底検証されている。