学位を取り消された当事者が処分の無効を訴え、大学側を相手取って民事訴訟や行政訴訟を起こすケースも少なくありません。しかし、これまでの裁判例を見ると、司法が大学側の処分を覆すハードルは極めて高いのが実情です。
日本の裁判所は、大学における学術的評価や学位授与の適否について、伝統的に「部分社会の法理」および「大学の自治・裁量権」を強く尊重する立場をとっています。論文が学問的に価値を持つか、不正行為が存在したかどうかの実質的判断は、高度に学術的な専門判断を要するため、大学の調査結果に明らかな事実誤認や裁量権の逸脱・乱用がない限り、裁判所が自ら論文の優劣を再審査することは基本的にありません。
裁判において争点となるのは、主に以下の2点です。
- 実質的理由の妥当性:認定された捏造・改ざん・盗用が、学位授与を取り消すに値する重大な不正であったか。
- 手続きの公正さ(適正手続):調査過程において、対象者に十分な弁明の機会が与えられていたか、規定された審査委員会を経て決定されたか。
過去の判例でも、大学側が手続き規定に従って弁明の場を設け、専門家による検証を経て下した処分であれば、請求棄却(大学側の勝訴)となる判決が大多数を占めています。