「なぜ特定の色で満たされた部屋に入ると猛烈な倦怠感に襲われるのか」「なぜ白い紙に印刷された黒い文字を読むだけで頭痛がするのか」。ASD(自閉スペクトラム症)やADHDの当事者が抱えてきたこうした悩みに対し、認知神経科学のフロントラインでは極めて具体的な解説が与えられつつある。脳の一次視覚野における神経興奮と抑制のバランス、そして網膜から伝達される視覚信号のフィルタリング機能の違いが、過度な輝度感知や特定の色彩に対する過敏性を生み出しているというのだ。
国内においても、国立精神・神経医療研究センターなどの専門機関が最新のfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いた脳機能計測を実施している。その結果、定型発達者と視覚過敏を持つ当事者とでは、色刺激を受けた際の脳内ネットワークの活性化パターンに明らかな差異があることが裏付けられた。当事者が感じる視覚的ストレスは心の持ちようなどではなく、客観的に測定可能な生理現象にほかならない。厚生労働省が定める発達支援の基本指針においても、近年はこうした視覚環境の調整が生活支援の柱として位置づけられ始めている。