壁を壊したのは構造だけではない。利用者の「線引き」そのものも取り払われた。従来の施設は、関係者以外を排除するクローズドな世界だった。しかし、新しくなったフロアには誰でも立ち寄れるカフェやオープンライブラリー、スタートアップ企業が日常的に入居するコワーキングスペースが混在している。
「隣の席でノートPCを開いている人物が、著名な教授なのか、地元の高校生なのか、あるいは海外からの投資家なのか分からない。そのカオスこそが目的なのです」と施設運営責任者は笑う。偶然の出会いが新しいアイデアを生み、地域コミュニティの課題解決へと直結する。かつて試験のためだけに重い足取りで通った場所は、今や都市の熱気が濃縮される触媒へと進化した。