タイヤ交換時に最も多く寄せられる疑問の一つが「純正よりも速度記号が低いタイヤを履かせると車検に通らないのか?」という点です。
結論から言えば、日本の道路運送車両法における保安基準では、速度記号そのものを理由に車検不適合となる規定はありません。車検で厳密にチェックされるのは、タイヤの溝深さ(1.6mm以上/スリップサインの露出がないこと)、ひび割れや偏摩耗の有無、車体外へのはみ出し、そして「軸重に対するロードインデックス(タイヤ負荷能力計算)の適合」です。
しかし、「車検に通るから安全」と過信するのは早計です。タイヤの許容速度と内部空気圧には密接な物理法則が存在します。空気圧が不足した状態で高速連続走行を行うと、タイヤのたわみが戻りきらずに波打つ「スタンディングウェーブ現象」が発生します。この現象が起きると、タイヤ内部で急激な自己発熱が生じ、トレッド面が剥離・バーストする重大事故へ直結します。
さらに、欧州ETRTO規格などの規定では、時速210km/h(V規格以上)を超える領域において、速度の上昇に伴い実効的な負荷能力が低減する「負荷能力減衰率」が定められています。日常の空気圧管理を怠ると、タイヤの最高許容速度はカタログスペックよりも大幅に低下することを肝に銘じる必要があります。