ビル群が空を覆う天神の近代的な街並みから数分歩くだけで、空気が一変する。大名や薬院の路地に入ると、古い倉庫やアパートを丸ごとリノベーションしたインディペンデントな焙煎所が目に入る。高層ビル化が進む都心部への反作用のように、あえて「手触り感」のある木材やコンクリートの質感を残した店舗が支持を集めているのだ。
ここで味わえるのは、大量生産とは無縁のクラフトコーヒーだ。浅煎りのフルーティーな浅煎り豆から、九州の伝統的な深煎り文化を継承するダークローストまで、バリスタが一杯ずつ丁寧に抽出し、その豆が育った農園の標高や製法まで熱っぽく語ってくれる。都市の急激な変化の中で、こうした小規模なロースタリーは人々の「心の避難所」として機能している。