「大切な人にカモミールを贈りたいけれど、何か不吉な裏の意味があるのでは」と懸念する声は少なくありません。調査の結果、カモミールに関連する公式な花言葉の中に、死、復讐、不吉、別れを意味するネガティブな花言葉は存在しないことが確認されています。それにもかかわらず、「怖い」という疑惑がネット上で一人歩きしている背景には、以下の3つの明確な要因が存在します。
第1に、「逆境」や「苦難」という単語が放つ心理的インパクトです。「逆境に耐える」「苦難の中の力」という言葉は、本来「困難を乗り越える強い意志」を称えるポジティブなメッセージです。しかし、言葉の前半部分である「逆境」「苦難」という過酷な状況だけが切り取られ、「現在進行形で辛い境遇にあることを暗示しているのではないか」という心理的連想(ネガティブ・バイアス)を生み出しています。
第2に、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ヘンリー四世 第1部』に登場する有名な台詞の影響です。作中で「カモミールは踏まれれば踏まれるほど速く育ち、若者は放任されればされるほど早く駄目になる」という一節が語られます。「踏みつけられる植物」という強烈な比喩表現が、一部で「過酷な試練」「不条理な抑圧」というダークなイメージへと歪められて伝播した経緯があります。
第3に、ハーブとしての実用面における禁忌事項との混同です。カモミールはキク科植物であるため、ブタクサやヨモギなどにアレルギーを持つ人に対してアレルギー反応を引き起こすリスクがあります。また、子宮収縮作用の可能性から妊娠初期の多量摂取に注意が促されるなど、メディカルハーブとしての注意喚起情報が「危険・怖い」という断片的な噂に変質した側面も否めません。