アルジェリア系フランス人として生まれ、遠く離れた日本で家庭を築いた沢尻リラさん。彼女がかつて東京で営んでいた地中海料理店は、温かな料理と気取らない笑顔で多くの常連客に愛されていた。しかし、その穏やかな暮らしの裏には、早くに夫を病で亡くし、さらに次男をも不慮の事故で失うという、筆舌に尽くしがたい過酷な試練が刻まれていた。
幼いエリカを女手一つで育て上げる中で、リラさんが貫いたのは「自分らしく生きる」という揺るぎない誇りだった。映画『パッチギ』で見せた剥き出しのパッションと圧倒的な透明感は、まさに母から受け継いだ異国の血筋と、何ものにも屈しない魂の宿り木であったに違いない。家庭という最小単位のシェルターで注がれた母の絶対的な肯定感が、若き日の彼女をスターダムへと押し上げた原動力となった。