ブームの導火線となったのは、食の文脈だけではない。空前の大ヒットを記録したインドの映画『RRR』や、Netflixで配信される現地ドキュメンタリーを通じて、南アジアのカルチャーそのものが一気に身近になったことが大きい。映像を通じて映し出されるタミル・ナードゥ州やケーララ州の瑞々しい景色、青々としたバナナの葉に手で豪快に料理を広げる人々の姿は、日本人のインドに対するステレオタイプを軽やかに解体した。
かつてインド料理といえば「ナンと濃厚なチキンカレー」という画一的なイメージが根強かった。しかし、映像カルチャーの浸透によって、地域ごとの多様な食文化への関心が急上昇した。米を主食とし、ココナッツやタマリンドを多用する南インド料理の存在は、知的好奇心度の高い都市層から火がつき、瞬く間に全国のフードラバーへと波及していったのだ。