急に鼻血が出る大人は要注意と言われる最大の理由は、出血を引き起こしている病態の根本的な違いにあります。小児の鼻血の約9割は、鼻中隔の前方にあるキーゼルバッハ部位からの出血であり、指で触ったりアレルギー性鼻炎で擦ったりする物理的な軽微損傷が原因です。一方、大人の急激な出血には、血管壁自体の脆弱化や内科的疾患が密接に絡み合っています。
大人の鼻血の原因となる病気として、最も頻度が高く警戒すべき筆頭が動脈硬化を伴う高血圧症です。年齢とともに弾力性を失った細小動脈は、急激な血圧の上昇に耐えきれず破綻します。起床時や激しい運動後、あるいは極度の精神的緊張に晒された瞬間に、血管内圧の急上昇によって血管が裂け、突然の大量出血を招くのです。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の集計データや救急搬送記録を分析しても、救急外来を受診する成人の難治性鼻出血患者の約半数以上に高血圧の既往、もしくは受診時の収縮期血圧160mmHg以上の異常高値が認められています。
さらに見過ごせないのが、肝硬変や腎不全などの代謝不全に伴う凝固能低下、そして白血病の初期症状としての鼻血です。血液のがんである白血病や骨髄異形成症候群では、造血機能の破壊によって血小板が著しく減少します。これにより、「鼻をかんだだけなのに血が止まらない」「歯茎からもじわじわと出血する」「手足にぶつけた覚えのない紫斑(皮下出血)が多発する」といった出血傾向が連鎖的に現れます。単なる「のぼせ」や「疲れ」と見過ごして放置すると、致死的な全身症状への進行を見落とす危険があるのです。